*管理人*

ぱくお

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カエル林檎

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 私達は今、朝パン屋さんで頂いたものと、セニシエさんが持ってきてくださったランチボックスを開き、浜辺でピクニック気分を味わっています。レジャーシートまで準備をしているセニシエさんは用意周到です。ランチボックスの中身はセニシエさんのお手製でしょうか? とても美味しそうです。

「さぁ、食べてください。余り物の詰め合わせですが、自信作ばかりなんです。

 セニシエさんはニコニコしながら言いました。なかなか高級そうな食べ物が多く見られますが、お金持ちなのかもしれません。

「セニシエの作る料理はホント美味しいよね~。まぁ、セニシエがご飯作るしかないから腕も上がるか・・・」

 セインくんはペペロンチーノをボックスとは別で持ってきたお皿に乗せると、もぐもぐと食べながら呟きました。

「こら、セイン。食べながら喋ってはいけませんよ。・・・ですが、ありがとうございます。」

「セニシエさん、毎日ご飯を作っているんですか? あ、これ美味しい。」

 私はエビが入った炒め物を食べました。作り方次第で味はこんなにも変わるんですね。

「ご飯だけじゃないよ。朝見ただろうけど、掃除に洗濯、その他雑用全部セニシエだよ。アイツらなーんにもやらないで遊び呆けてるんだもん。ほんとバカだよね~。」

「あっはは・・・そんな事言っちゃダメですよ。まぁ本当の事ですが。」

 苦笑いしながらもトーンを低めて呟くセニシエさんは、左手で持ったナイフを強く握りしめては緩めてを繰り返します。そして黙り込むと下を向いて「絶対に痛い目見せてやるからな・・・」と発言したのでした。私はびっくりしましたが、そんな彼をセインくんは表情を変えずに見守ります。

「あぁ・・・すみません。つい本音が出てしまったようです。でもホント、気にしないでください・・・。」

 大きく深呼吸したセニシエさんはまた優しい表情に戻ると、ようやく食べ物を取り分けて食べ始めたのでした。

 しばらく何の変哲もない話をしながら食事を続け、最後にと開けずにいたタッパーをセニシエさんは取り出しました。中にはフルーツが入っており、これもまた余り物だと言うのです。普段のことを考えるととても勿体なく感じてしまうほどの量です。私はうさぎの形に切ってあるりんごを手に取ると、それを口にしたのでした。りんごの果汁がとても甘くてほっぺたが落ちそうです。想像する季節的にはりんごの時期ではありませんが、こんなにも美味しいものが食べられるなんて・・・これもまたあべこべな世界だからこそ許されるのでしょうか。

「気に入ってもらえて良かったです。数少ないものを頂いている為、とても貴重なんですよ。」

 故に屋敷の食事には提供しなかったそう。「秘密ですよ」と人差し指で口を抑えると、微笑んだのでした。

 そんな時、浜辺と街への道を繋ぐ境にある時計が1時を告げる鐘を鳴らしました。

「嘘でしょう。もう1時ですか・・・時が経つのは早いものです。」

「いつもの片付けの時間?」

「ええ、そんなところですね。皿洗いさせようにもワザと割るのです。余計な仕事増やされるよりはマシでしょう・・・。」

 セニシエさんはバケットに荷物を片付けると、また申し訳なさそうにこう言うのでした。「すみません、マリアさん。またお会いしましょう。」と。

 私は急いで帰っていく彼を、なんとも言えない表情で見送ることしかできませんでした。

セインくんはセニシエくんが見えなくなるまでじっと視線を送り続けると、不意に「逃げればいいのに・・・」と呆れた口調で言いながら砂を蹴ったのでした。

「さて、僕達はどうしようか。まだまだ遊び足りないけど、無理に付き合ってもらうわけにもいかないからね。」

 セインくんは私に向き直ると言いました。私は特に急いでやりたいこともないものですから、快く付き合うことに決めたのでした。

「う~ん・・・それにしても何しよう。何も思い浮かばないや。」

 腕を組みながらうなるセインくんは辺りをとぼとぼ歩きまわると、「あっ‼」と閃き、また私の手を引っ張って行くのでした。

 

 

 私達はまたまた海の中に潜り込むと、今度は先程よりも深くに進んで行きました。

「今度はどこへ行くの?」

 私は手を引かれている為、付いて行くことしかできません。

「どうくつ!」

「洞窟・・・? 海の中にそんなものがあるんですね。」

 世の中の事全く知りもしないようなトンチンカンな発言をしてしまった気がします。しかしながら海の事は全くの無知です。お許しください。

「どうくつって言っても普通のどうくつとは違うよ。なんか、凄くキラキラしてるんだよね。せっかくだしそれも見せちゃおうかなって!」

セインくんはそう言うと泳ぐスピードを速めました。時間が経つにつれ、青い海で泳ぐ綺麗な魚達、という存在がどんどんとなくなっていく程真っ暗な世界になってしまいました。もう、いつ何が起きてもおかしくないような状況に、流石の私もこの身を震わせてしまったのでした。

「キラキラというには程遠い場所に来てしまったようだけど…本当に大丈夫なのかしら。」

 私は考え込んでしまします。彼は「あははっ」と笑うとそれ以上は何も言わずに、更に奥へと進んで行ったのです。上からの光はまるで見えないような、深海の様な場所。正確にはいろんなものの下を進んでいるのでそう思えるだけ・・・みたいですが、目がなかなか慣れません。

「やっと着いた・・・」

 と、泳いでいた足を止めたセインくんは、指さす仕草をしたのかそんな気配を感じます。

「ここ、どうくつ。暗くて見えないだろうけど・・・。」

「ほんと・・・何も見えません・・・。」

 隣にいるセインくんを見ますが、やはりまともには見えません。

「大丈夫だよ。中に入ったらさっき以上に凄いもの見られるから!」

 セインくんは笑いながら言うと、また私を引っ張って行ったのでした。